に結い、着物は秋草色染《あきくさいろぞめ》の振袖《ふりそで》に、緋縮緬《ひぢりめん》の長襦袢《ながじゅばん》に繻子《しゅす》の帯をしどけなく締め、上方風《かみがたふう》の塗柄《ぬりえ》の団扇《うちわ》を持って、ぱたり/\と通る姿を、月影に透《すか》し見るに、何《ど》うも飯島の娘お露のようだから、新三郎は伸び上《あが》り、首を差し延べて向うを見ると、向うの女も立止まり、
女「まア不思議じゃアございませんか、萩原さま」
 と云われて新三郎もそれと気が付き、
新「おや、お米さん、まアどうして」
米「誠に思いがけない、貴方様《あなたさま》はお亡くなり遊ばしたという事でしたに」
新「へえ、ナニあなたの方でお亡くなり遊ばしたと承わりましたが」
米「厭《いや》ですよ、縁起の悪い事ばかり仰しゃって、誰が左様な事を申しましたえ」
新「まアおはいりなさい、其処《そこ》の折戸《おりど》のところを明けて」
 と云うから両人内へ這入《はい》れば、
新「誠に御無沙汰を致しました、先日山本志丈が来まして、あなた方御両人ともお亡くなりなすったと申しました」
米「おやまア彼奴《あいつ》が、私《わたくし》の方へ来ても貴方
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