きたいと思っているのに、君が来ないから私は行《ゆ》きそこなっているのです」
志「さて、あの飯島のお嬢も、可愛《かわい》そうに亡くなりましたよ」
新「えゝお嬢が亡くなりましたとえ」
志「あの時僕が君を連れて行ったのが過《あやま》りで、向うのお嬢がぞっこん君に惚れ込んだ様子だ、あの時何か小座敷で訳があったに違いないが、深い事でもなかろうが、もし其の事が向うの親父《おやじ》さまにでも知れた日には、志丈が手引《てびき》した憎い奴め、斬って仕舞う、坊主首《ぼうずッくび》を打《ぶ》ち落す、といわれては僕も困るから、実はあれぎり参りもせんでいたところ、不図《ふと》此の間飯島のお邸《やしき》へまいり、平左衞門様にお目にかゝると、娘は歿《みま》かり、女中のお米も引続《ひきつゞ》き亡くなったと申されましたから、段々様子を聞きますと、全く君に焦《こが》れ死《じに》をしたという事です、本当に君は罪造りですよ、男も余《あんま》り美《よ》く生れると罪だねえ、死んだものは仕方がありませんからお念仏でも唱えてお上げなさい、左様なら」
新「あれさ志丈さん、あゝ往《い》って仕舞った、お嬢が死んだなら寺ぐらいは教えてくれゝ
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