ない、これはいっその事源次郎お國の両人を槍《やり》で突き殺して、自分は腹を切ってしまおう」
 と、忠義無二の孝助が覚悟を定めましたが、さて此のあとは何《ど》うなりますか。

        六

 萩原新三郎は、独りクヨ/\として飯島のお嬢の事ばかり思い詰めています処《ところ》へ、折《おり》しも六月二十三日の事にて、山本志丈が訪ねて参りました。
志「其の後《ご》は存外の御無沙汰を致しました、ちょっと伺《うかゞ》うべきでございましたが、如何《いか》にも麻布辺からの事|故《ゆえ》、おッくうでもあり且《かつ》追々《おい/\》お熱く成って来たゆえ、藪医《やぶい》でも相応に病家《びょうか》もあり、何や彼《か》やで意外の御無沙汰、貴方《あなた》は何《ど》うもお顔の色が宜《よ》くない、なにお加減がわるいと、それは/\」
新「何分にも加減がわるく、四月の中旬頃《なかばごろ》からどっと寝て居ります、飯もろく/\たべられない位で困ります、お前さんもあれぎり来ないのは余《あんま》り酷《ひど》いじゃアありませんか、私《わたくし》も飯島さんの処《ところ》へ、ちょっと菓子折《かしおり》の一つも持ってお礼に行《ゆ》
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