い》れず、源次郎は是を機会《しお》に跣足《はだし》にて根府川石《ねぶかわいし》の飛石《とびいし》を伝いて帰りました。
國「お前が悪いから打《ぶ》たれたのだよ、お隣の御二男様に飛んでもない事を云って済まないよ、お前こゝにいられちゃア迷惑だから出て行ってお呉れ」
 と云いながら、痛みに苦しむ孝助の腰をトンと突いて、庭へ突き落《おと》すはずみに、根府川石に又痛く膝を打《う》ち、アッと云って倒れると、お國は雨戸をピッシャリ締めて奥へ入《い》る。後《あと》に孝助くやしき声を震わせ、
「畜生奴《ちくしょうめ》/\、犬畜生奴、自分達の悪い事を余所《よそ》にして私を酷《ひど》い目に逢わせる、殿様がお帰りになれば申上げて仕舞おうか、いや/\若《も》し此の事を表向きに殿様に申上げれば、屹度《きっと》あの両人と突合《つきあわ》せに成ると、向うには証拠の手紙があり、此方《こっち》は聞いたばかりの事だからどう云うても証拠になるまい、殊《こと》には向うは二男の勢い、此方《こちら》は悲しいかな草履取の軽い身分だから、お隣《となり》づからの義理でも私はお暇《いとま》になるに相違ない、私がいなければ殿様は殺されるに違い
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