源次郎殿
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 と孝助がよく/\見れば全く主人の手蹟《しゅせき》だから、これはと思うと。
源「どうだ手前は無筆ではあるまい、夜分にてもよいから来て釣道具を直して呉れろとの頼みの状だ、今夜は熱くて寝られないから、釣道具を直しに参った、然《しか》るを手前から疑念を掛けられ、悪名《あくみょう》を附けられ、甚《はなは》だ迷惑致す、貴様は如何《いかゞ》致す積りか」
孝「左様な御無理を仰しゃっては誠に困ります、此の書付《かきつけ》さえなければ喧嘩《けんか》は私《わたくし》が勝《かち》だけれども、書付が出たから私の方が負《まけ》に成ったのですが、何方《どっち》が悪いかとくと貴方《あなた》の胸に聞いて御覧遊ばせ、私は御当家様の家来でございます、無闇に斬っては済みますまい」
源「汝《うぬ》の様な汚《けが》れた奴《やっこ》を斬るかえ、打殺《ぶちころ》してしまうわ、何か棒はありませんか」
國「此処《こゝ》にあります」
 とお國が重籐《しげとう》の弓の折《おれ》を取出《とりだ》し、源次郎に渡す。
孝「貴方様《あなたさま》、左様《そん》な御無理な事をして、私《わたくし》のような虚弱《ひよ
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