しちょう》を吊って寝て見たが、何分にも熱くって寝付かれないものだから、渋団扇《しぶうちわ》を持って、
「どうも今年の様に熱い事はありゃアしない」
 と云いながら、お庭をぶら/″\歩いていると、板塀《いたべい》の三|尺《じゃく》の開《ひら》きがバタリ/\と風にあおられているのを見て、
孝「締りをして置いたのに何《ど》うして開《あ》いたのだろう、おや庭下駄が並べてあるぞ、誰《だれ》が来たな、隣家《となり》の次男めがお國さんと様子が訝《おか》しいから、ことによったら密通《くッつ》いているのかも知れん」
 と抜足《ぬきあし》してそっと此方《こなた》へまいり、沓脱石《くつぬぎいし》へ手を支えて座敷の様子を窺《うかゞ》うと、自分が命を捨てゝも奉公をいたそうと思っている殿様を殺すという相談に、孝助は大《おお》いに怒《いか》り、歳《とし》はまだ二十一でございますが、負けない気性だから、怒りの余り思わず知らずガッと鼻を鳴らす。
源「お國さん誰《たれ》か来たようだよ」
國「貴方《あなた》は本当に臆病《おくびょう》で入らっしゃるよ、誰《たれ》も参りは致しません」
 と耳を立てゝ聞けば人の居る様子ですから、

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