忍び来るような訳だから、どうせ了簡が定まりゃアしないや」
國「私《わたくし》は殿様の側に何時《いつ》までも附いていて、殿様が長生《ながいき》をなすって、貴方《あなた》は外《ほか》へ御養子にでも入らっしゃれば、お目にかゝる事は出来ません、其の上綺麗な奥様でもお持ちなさろうものなら、國のくの字も仰しゃる気遣《きづか》いはありませんよ、それですから貴方が本当に信実《しんじつ》がおあり遊ばすならば、私の願《ねがい》を叶《かな》えて、内《うち》の殿様を殺して下さいましな」
源「情があるから出来ないよ、私《わたくし》の為《た》めには恩人の伯父さんだもの、何《ど》うしてそんな事が出来るものかね」
國「こうなる上からは、もう恩も義理もありはしませんやね」
源「それでも伯父さんは牛込|名代《なだい》の真影流の達人だから、手前如きものが二十人ぐらい掛っても敵《かな》う訳のものではないよ、其の上|私《わたくし》は剣術が極《ごく》下手《へた》だもの」
國「そりゃア貴方《あなた》はお剣術はお下手《へーた》さね」
源「そんなにオヘータと力を入れて云うには及ばない、それだから何《ど》うもいけないよ」
國「貴方は剣術
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