《こうべ》を下げて、頻《しき》りに詫《わ》びても、酔漢《よっぱらい》は耳にも懸けず猛《たけ》り狂って、尚《なお》も中間をなぐり居《お》るを、侍はト見れば家来の藤助だから驚きまして、酔漢に対《むか》い会釈《えしゃく》をなし、
侍「何を家来めが無調法《ぶちょうほう》を致しましたか存じませんが、当人に成り代《かわ》り私《わたくし》がお詫《わび》申上げます、何卒《なにとぞ》御勘弁を」
酔「なに此奴《こいつ》は其の方の家来だと、怪《け》しからん無礼な奴、武士の供をするなら主人の側に小さくなって居《お》るが当然、然《しか》るに何《なん》だ天水桶《てんすいおけ》から三尺も往来へ出しゃばり、通行の妨《さまた》げをして拙者を衝《つ》き当《あた》らせたから、止《や》むを得ず打擲《ちょうちゃく》いたした」
侍「何も弁《わきま》えぬものでございますれば偏《ひとえ》に御勘弁を、手前成り代ってお詫を申上げます」
酔「今この所で手前がよろけた処《とこ》をトーンと衝《つ》き当ったから、犬でもあるかと思えば此の下郎《げろう》めが居て、地べたへ膝を突かせ、見なさる通りこれ此の様に衣類を泥だらけにいたした、無礼な奴だから打
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