擲《ちょうちゃく》致したが如何《いかゞ》致した、拙者《せっしゃ》の存分に致すから此処《こゝ》へお出しなさい」
侍「此の通り何も訳の解《わか》らん者、犬同様のものでございますから、何卒《なにとぞ》御勘弁下されませ」
酔「こりゃ面白い、初めて承《うけたまわ》った、侍が犬の供を召連《めしつ》れて歩くという法はあるまい、犬同様のものなら手前|申受《もうしう》けて帰り、番木鼈《まちん》でも喰わして遣《や》ろう、何程《なにほど》詫びても料簡は成りません、これ家来の無調法を主人が詫《わぶ》るならば、大地《だいじ》へ両手を突き、重々《じゅう/″\》恐れ入ったと首《こうべ》を地《つち》に叩き着けて詫《わび》をするこそ然《しか》るべきに、何《なん》だ片手に刀の鯉口《こいぐち》を切っていながら詫をする抔《など》とは侍の法にあるまい、何だ手前は拙者を斬る気か」
侍「いや是は手前が此の刀屋で買取ろうと存じまして只今|中身《なかご》を鑒《み》て居ました処《ところ》へ此の騒ぎに取敢《とりあ》えず罷出《まかりで》ましたので」
酔「エーイそれは買うとも買わんとも貴方《あなた》の御勝手《ごかって》じゃ」
 と罵《のゝし》
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