祖へ対して相済まん、不孝不義の不届《ふとゞき》ものめが、手打《てうち》にするから左様心得ろ」
新「暫《しばら》くお待ち下さい、其のお腹立《はらだち》は重々《じゅう/″\》御尤《ごもっとも》でございますが、お嬢様が私《わたくし》を引きずり込み不義を遊ばしたのではなく、手前が此の二月始めて罷出《まかりい》でまして、お嬢様を唆《そゝの》かしたので、全く手前の罪でお嬢様には少しもお科《とが》はございません、どうぞ嬢様はお助けなすって私を」
露「いゝえ、お父様《とっさま》私《わたくし》が悪いのでございます、どうぞ私をお斬り遊ばして、新三郎様をばお助け下さいまし」
 と互《たがい》に死を争いながら平左衞門の側へ摺寄《すりよ》りますと、平左衞門は剛刀《ごうとう》をスラリと引抜《ひきぬ》き、
「誰彼《たれかれ》と容赦《ようしゃ》はない、不義は同罪、娘から先へ斬る、観念しろ」
 と云いさま片手なぐりにヤッと下《くだ》した腕の冴《さ》え、島田の首がコロリと前へ落ちました時、萩原新三郎はアッとばかりに驚いて前へのめる処を、頬《ほゝ》より腮《あご》へ掛けてズンと切られ、ウーンと云って倒れると。
伴「旦那え/\
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