、お露は此の蓋《ふた》を新三郎に渡し、自分は其の身の方《ほう》を取って互に語り合う所へ、隔《へだ》ての襖《ふすま》をサラリと引き明けて出て来ましたは、おつゆの親御《おやご》飯島平左衞門様でございます。両人は此の体《てい》を見てハッとばかりに恟《びっく》り致しましたが、逃げることもならず、唯うろ/\して居る所へ、平左衞門は雪洞《ぼんぼり》をズッと差《さし》つけ、声を怒《いか》らし。
平「コレ露これへ出ろ、又貴様は何者だ」
新「へい、手前は萩原新三郎と申す粗忽《そこつ》の浪士でございます、誠に相済みません事を致しました」
平「露、手前はヤレ國がどうのこうの云うの、親父《おやじ》がやかましいの、どうか閑静な所へ行《ゆ》きたいのと、さま/″\の事を云うから、此の別荘に置けば、斯様《かよう》なる男を引きずり込み、親の目を掠《かす》めて不義を働きたい為《た》めに閑地《かんち》へ引込《ひきこ》んだのであろう、これ苟《かりそ》めにも天下|御直参《ごじきさん》の娘が、男を引入れるという事がパッと世間に流布《るふ》致せば、飯島は家事不取締《かじふとりしまり》だと云われ家名《かめい》を汚《けが》し、第一御先
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