伴「こんな所へ着けて何方《どちら》へ入らっしゃるのですえ、私《わッち》も御一緒に参りましょう」
新「お前は其処《そこ》に待っていなよ」
伴「だってそのための伴藏ではございませんか、お供を致しましょう」
新「野暮《やぼ》だのう、色にはなまじ連れは邪魔よ」
伴「イヨお洒落《しゃれ》でげすね、宜《よ》うがすねえ」
という途端に岸に船を着けましたから、新三郎は飯島の門の処へまいり、ブル/\慄《ふる》えながらそっと家《うち》の様子を覗《のぞ》き、門が少し明いてるようだから押して見ると明いたから、ずっと中へ這入《はい》り、予《かね》て勝手を知っている事|故《ゆえ》、だん/\と庭伝いに参り、泉水縁《せんすいべり》に赤松の生えてある処から生垣《いけがき》に附いて廻れば、こゝは四畳半にて嬢様のお部屋でございました。お露も同じ思いで、新三郎に別れてから其の事ばかり思い詰め、三月から煩《わずら》って居ります所へ、新三郎は折戸《おりど》の所へ参り、そっとうちの様子を覗《のぞ》き込みますと、うちでは嬢様は新三郎の事ばかり思い続けて、誰《たれ》を見ましても新三郎のように見える処へ、本当の新三郎が来た事ゆえ、ハ
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