\鰡《いな》か※[#「魚+節」、27−14]《たなご》ぐらいのものでございましょう、兎も角もいらっしゃるならばお供をいたしましょう」
と弁当の用意を致し、酒を吸筒《すいづゝ》へ詰込みまして、神田の昌平橋《しょうへいばし》の船宿から漁夫《りょうし》を雇い乗出《のりだ》しましたれど、新三郎は釣はしたくはないが、唯《たゞ》飯島の別荘のお嬢の様子を垣の外からなりとも見ましょうとの心組《こゝろぐみ》でございますから、新三郎は持って来た吸筒の酒にグッスリと酔って、船の中で寝込んでしまいましたが、伴藏は一人で日の暮《くれ》るまで釣を致して居ましたが、新三郎が寝たようだから、
伴「旦那え/\お風をひきますよ、五月頃は兎角冷えますから、旦那え/\、是は余りお酒を勧めすぎたかな」
新三郎はふと見ると横川のようだから。
新「伴藏こゝは何処《どこ》だ」
伴「へい此処《こゝ》は横川です」
と云われて傍《かたえ》の岸辺を見ますと、二重の建仁寺《けんにんじ》の垣に潜《くゞ》り門がありましたが、是は確《たしか》に飯島の別荘と思い、
新「伴藏や一寸《ちょっと》此処《こゝ》へ着けて呉れ、一寸行って来る所があるから」
前へ
次へ
全308ページ中36ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング