半ぐらいの御膳が上《あが》れんとは、私《わたくし》などは親椀《おやわん》で山盛りにして五六杯も喰わなくっちゃアちっとも物を食べたような気持が致しやせん、あなた様はちっとも外出《そとで》をなさいませんな、此の二月でしたっけナ、山本さんと御一緒に梅見にお出掛けに成って、何か洒落《しゃれ》をおっしゃいましたっけナ、ちっと御保養をなさいませんと本当に毒ですよ」
新「伴藏貴様はあの釣《つり》が好きだっけな」
伴「へい釣は好きのなんのッて、本当にお飯《まんま》より好きでございます」
新「左様か、そうならば一緒に釣に出掛けようかのう」
伴「あなたは慥《たし》か釣はお嫌いではありませんか」
新「何《なん》だか急にむか/\と釣が好きになったよ」
伴「へい、むか/\とお好きに成って、そして何方《どちら》へ釣にいらっしゃるお積りで」
新「そうサ、柳島の横川で大層釣れるというから彼処《あすこ》へ往《ゆ》こうか」
伴「横川というのは彼《あ》の中川へ出る処《ところ》ですかえ、そうしてあんな処で何が釣れますえ」
新「大きな鰹《かつお》が釣れるとよ」
伴「馬鹿な事を仰《おっ》しゃい、川で鰹が釣れますものかね、たか/″
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