切った所で、己が鉄砲を鼻ッ先へ突付けるのだ、孝助が驚いて後《あと》へさがれば、源さまが飛出して斬付けりゃア挟《はさ》み打ち[#「挟《はさ》み打ち」は底本では「狭《はさ》み打ち」]、わきアねえ、遁《に》げるも引くも出来アしねえ」
源「じゃアどうか工夫してくれろ、何分頼む」
 と是から龜藏は何処《どこ》からか三|挺《ちょう》の鉄砲を持ってまいり、皆々連立ち十郎ヶ峰に孝助の来るを待受けました。

        二十一の下

 さて相川孝助は宇都宮池上町の角屋へ泊り、其の晩九ツの鐘の鳴るのを待ち掛けました処、もう今にも九ツだろうと思うから、刀の下緒《さげお》を取りまして襷《たすき》といたし、裏と表の目釘《めくぎ》を湿《しめ》し、養父相川新五兵衞から譲り受けた藤四郎吉光の刀をさし、主人飯島平左衞門より形見に譲られた天正助定を差添《さしぞえ》といたしまして、橋を渡りて板塀の横へ忍んで這入りますと、三尺の開き戸が明いていますから、ハヽアこれは母が明けて置いてくれたのだなと忍んで行《ゆ》きますと、母の云う通り四畳半の小座敷がありますから、雨戸の側《わき》へ立寄り、耳を寄せて内の様子を窺《うかゞ》いま
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