月影に見れば、一人は田中の中間喧嘩の龜藏、見紛《みまご》う方《かた》なき面部の古疵《ふるきず》、一人は元召使いの相助なれば、源次郎は二度|恟《びっく》り、
源「これ、相助ではないか」
相「これは御次男様、誠に暫《しばら》く」
源「まア安心した、本当に恟りした」
國「私も恟りして腰が抜けた様だったが、相助どんかえ」
相「誠にヘイ面目ありません」
源「手前は未《ま》だ斯様《かよう》な悪い事をしているか」
相「実はお屋敷をお暇《いとま》に成って、藤田の時藏と田中の龜藏と私と三人|揃《そろ》って出やしたが、何処《どこ》へも行《い》く所はなし、何《ど》うしたら宜かろうかと考えながら、ぶら/\と宇都宮へ参りやして、雲助になり、何うやら斯《こ》うやらやっているうち、時藏は傷寒《しょうかん》を煩《わずら》って死んでしまい、金はなくなって来た処から、ついふら/\と出来心で泥坊をやったが病付《やみつき》となり、此の間道《かんどう》はよく宇都宮の女郎を連れて、鹿沼の方へ駈落するものが時々あるので、こゝに待伏せして、サア出せと一言《ひとこと》いえば、私は剣術を知らねえでも、怖がって直《じ》きに置いて行くような
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