も是までさのみ悪い事をした覚えはないのに、此の様な悪人が出来るとは実になさけない事でございます、此の畜生め/\サッサと早く出て行《ゆ》け」
 と云われて、二人とも這々《ほう/\》の体《てい》にて荷拵《にごしら》えをなし、暇乞《いとまご》いもそこ/\に越後屋方を逃出しましたが、宇都宮明神の後道《うしろみち》にかゝりますと、昼さえ暗き八幡山、況《まし》て真夜中の事でございますから、二人は気味わる/\路《みち》の中ばまで参ると、一|叢《むら》茂る杉林の蔭より出てまいる者を透《すか》して見れば、面部を包みたる二人の男《おのこ》、いきなり源次郎の前へ立塞《たちふさ》がり、
○「やい、神妙《しんびょう》にしろ、身ぐるみ脱いて置いて行《い》け、手前達《てめえたち》は大方宇都宮の女郎を連出した駈落者《かけおちもの》だろう」
×「やい金を出さないか」
 と云われ源次郎は忍び姿の事なれば、大小を落し差《ざし》にして居りましたが、此の様子にハッと驚き、拇指《おやゆび》にて鯉口を切り、慄《ふる》え声を振立《ふりた》って、
源「手前達《てまえたち》は何だ、狼藉者」
 と云いながら、透《すか》して九日の夜《よ》の
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