なア」
平「はゝゝ、遠慮のない奴、これは大《おお》きにさようだ、武家では女は実に糞ったれだのう」
孝「うっかりと飛んでもない事を申上げ、お気に障《さわ》りましたら御勘弁をねがいます、どうぞ只今もお願い申上げまする通りお暇の節にはお剣術を願われますまいか」
平「此の程は役が替《かわ》ってから稽古場もなく、誠に多端《たゝん》ではあるが、暇《ひま》の節に随分教えてもやろう、其の方《ほう》の叔父は何商売じゃの」
孝「へい彼《あれ》は本当の叔父ではございません、親父《おやじ》の店受《たなうけ》で、ちょっと間に合わせの叔父でございます」
平「何かえ母親《おふくろ》は幾歳《いくつ》になるか」
孝「母親《おふくろ》は私《わたくし》の四歳《よッつ》の時に私を置去りに致しまして、越後の国へ往ってしまいましたそうです」
平「左様か、大分《だいぶ》不人情の女だの」
孝「いえ、それと申しまするのも親父の不身持《ふみもち》に愛想《あいそう》を尽かしての事でございます」
平「親父はまだ存生《ぞんしょう》か」
と問われて、孝助は
「へい」
と云いながら悄々《しお/\》として申しまするには、
「親父も亡くなりました
前へ
次へ
全308ページ中29ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング