あて》に駈出してやりました」
平「其の方は窮屈な武家奉公をしたいというのは如何《いかゞ》な訳じゃ」
孝「へい、私《わたくし》は武家奉公を致しお剣術を覚えたいのでへい」
平「はて剣術が好きとな」
孝「へい番町《ばんちょう》の栗橋《くりはし》様が御当家様《こちらさま》は、真影流《しんかげりゅう》の御名人《ごめいじん》と承わりました故、何《ど》うぞして御両家の内へ御奉公に上《あが》りたいと思いましていました処《ところ》、漸々《よう/\》の思いで御当家様《こちらさま》へお召抱《めしかゝ》えに相成り、念が届いて有難うございます、どうぞお殿様のお暇《ひま》の節には、少々ずつにてもお稽古が願われようかと存じまして参りました、御当家様《こちらさま》に若様でも入《いら》っしゃいます事ならば、若様のお守《もり》をしながら皆様がお稽古を遊ばすのをお側で拝見致していましても、型ぐらいは覚えられましょうと存じましたに、若様はいらっしゃらず、お嬢様には柳島の御別荘にいらっしゃいまして、お年はお十七とのこと、これが若様なれば余程《よっぽど》宜《よろ》しゅうございますに、お武家様にお嬢様は糞《くそ》ったれでございます
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