りは致しませんか」
りゑ「いゝえ、私も来て間もないことだが、昼の中《うち》は皆《みんな》買物や見物に出かけてしまうから誰もいないよ、日暮方は大勢帰って来るが、今は留守居が昼寝でもしている位だろうよ」
孝「フウ、左様なら申上げますが、お母様は私《わたくし》の四つの時の二月にお離縁になりましたのも、お父様があの通りの酒乱からで、それからお父様は其の年の四月十一日、本郷三丁目の藤村屋新兵衞と申す刀屋の前で斬殺《きりころ》され、無慙《むざん》な死をお遂げなされました」
りゑ「おやまア矢張《やっぱり》御酒《ごしゅ》ゆえで、それだから私アもうお前のお父《とっ》さんでは本当に苦労を仕抜いたよ、あの時もお前と云う可愛い子があることだから、別れたいのではないが、兄が物堅い気性だから、あんな者へ付けては置かれん、酒ゆえに主家《しゅか》をお暇《いとま》に成るような者には添わせて置かんと、無理無体に離縁を取ったが、お行方の事は此の年月《としつき》忘れた事はありませぬ、そうしてお父様が亡くなっては、跡で誰もお前の世話をする者がなかったろう」
孝「さアお父様の店受《たなうけ》彌兵衞と申しまする者が育てゝ呉れ、私《
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