いません、こりゃ狼藉者《ろうぜきもの》め何等《なんら》の遺恨で我に斬付けたか、次第を申せ」
曲「へい/\全く人違いでごぜえやす」
と小声にて、
「今この先で友達と間違いをした所が、皆《みんな》が徒党をして、大勢で私《わっち》を打殺《うちころ》すと云って追掛《おっか》けたものだから、一生懸命に此処《こゝ》までは逃げて来たが、目が眩んでいますから、殿様とも心付きませんで、とんだ粗相を致しました、何《ど》うかお見逃しを願います、其奴《そいつ》らに見付けられると殺されますから、早くお逃しなすって下されませ」
孝「全くそれに違いないか」
曲「へい、全く違《ちげ》えごぜえやせん」
相「あゝ驚いた、これ人違いにも事によるぞ、斬ってしまってから人違いで済むか、べらぼうめ、実に驚いた、良石和尚のお告げは不思議だなアおや今の騒ぎで重箱を何処《どこ》かへ落してしまった」
と四辺《あたり》を見※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]している所へ、依田豊前守《よだぶぜんのかみ》の組下にて石子伴作《いしこばんさく》、金谷藤太郎《かなやとうたろう》という両人の御用聞《ごようきゝ》が駆けて来て、孝助に向い慇懃《
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