いんぎん》に、
捕「へい申し殿様、誠に有難う存じます、此の者はお尋ね者にて、旧悪のある重罪な奴でござります、私共《わたくしども》は彼処《あすこ》に待受けていまして、つい取逃がそうとした処を、旦那様のお蔭で漸《ようや》くお取押えなされ、有難うございます、どうかお引渡しを願いとう存じます」
相「そうかえ、あれは賊かい」
捕「大盗賊《おおどろぼう》でござります」
孝「お父様《とっさま》呆れた奴でございます、此の不埓者め」
相「なんだ、人違いだなぞと嘘をついて、嘘をつく者は盗賊《どろぼう》の始りナニ疾《と》うに盗賊にもう成っているのだから仕方がない、直《す》ぐに縄を掛けてお引きなさい」
捕「殿様のお蔭で漸く取押え、誠に有り難う存じます、何《ど》うかお名前を承わりとう存じます」
相「不浄人を取押えたとて姓名なぞを申すには及ばん、これ/\/\重箱を落したから捜してくれ、あゝこれだ/\、危なかったのう」
孝「然《しか》しお父様、何分悪人とは申しながら、主人の法事の帰るさに縄を掛けて引渡すは何うも忍びない事でございます」
相「なれども左様《そう》申してはいられない、渡してしまいなさい、早く引きなされ」
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