ち》を切り、用心堅固に身を固め、四方に心を配りて参り、相川は重箱を提《さ》げて、孝助殿気を付けて行《ゆ》けと云いながら参りますると、向うより薄《すゝき》だゝみを押分けて、血刀《ちがたな》を提げ飛出して、物をも云わず孝助に斬り掛けました。此の者は栗橋無宿の伴藏にて、栗橋の世帯《しょたい》を代物付《しろものつき》にて売払い、多分の金子《かね》をもって山本志丈と二人にて江戸へ立退《たちの》き、神田佐久間町《かんださくまちょう》の医師|何某《なにがし》は志丈の懇意ですから、二人はこゝに身を寄せて二三日逗留し、八月三日の夜《よ》二人は更《ふ》けるを待ちまして忍び来《きた》り、根津の清水に埋《うず》めて置いた金無垢の海音如来の尊像《そんぞう》を掘出し、伴藏は手早く懐中へ入れましたが、伴藏の思うには、我が悪事を知ったは志丈ばかり、此の儘《まゝ》に生《い》け置かば後《のち》の恐れと、伴藏は差したる刀抜くより早く飛びかゝって、出し抜けに力に任して志丈に斬り付けますれば、アッと倒れる所を乗《の》し掛り、一刀|逆手《さかて》に持直し、肋《あばら》へ突込《つきこ》みこじり廻せば、山本志丈は其の儘にウンと云って
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