角だからマア持って行《ゆ》きなさい」
相「何方《どちら》へか遁路《にげみち》はございませんか」
良「そんな事を云わずズン/″\と行《ゆ》きなさい」
相「さようならば提灯《ちょうちん》を拝借して参りとうございます」
良「提灯を持たん方が却《かえっ》て宜しい」
 と云われて相川は意地の悪い和尚だと呟《つぶや》きながら、挨拶もそわ/\孝助と共に幡随院の門を立出《たちい》でました。

        二十

 孝助は新幡随院にて主人の法事を仕舞い、其の帰り道に遁《のが》れ難き剣難あり、浅傷《あさで》か深傷《ふかで》か、運がわるければ斬り殺される程の剣難ありと、新幡随院の良石和尚という名僧智識の教えに相川新五兵衞も大いに驚き、孝助はまだ漸《ようや》く廿二歳、殊《こと》に可愛いゝ娘の養子といい、御主《おしゅう》の敵《かたき》を打つまでは大事な身の上と、種々《いろ/\》心配をしながら打ち連れ立ちて帰る。孝助は仮令《たとえ》如何《いか》なる災《わざわい》があっても、それを恐れて一歩でも退《しりぞ》くようでは大事を仕遂げる事は出来ぬと思い、刀に反《そり》を打ち、目釘《めくぎ》を湿《しめ》し、鯉口《こいぐ
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