どうも助けるわけにはいかんなア、因縁じゃから何うしても遁るゝ事はない」
相「左様ならば、どうか孝助だけを御当寺《ごとうじ》へお留《と》め置きくだされ、手前《てまい》だけ帰りましょうか」
良「そんな弱い事では何うもこうもならんわえ、武士の一大事なものは剣術であろう、其の剣術の極意というものには、頭の上へ晃《きら》めくはがねがあっても、電光《いなづま》の如く斬込んで来た時は何うして之《これ》を受けるという事は知っているだろう、仏説《ぶっせつ》にも利剣《りけん》頭面《ずめん》に触《ふ》るゝ時|如何《いかん》という事があって其の時が大切の事じゃ、其の位な心得はあるだろう、仮令《たとえ》火の中でも水の中でも突切《つッき》って行《ゆ》きなさい、其の代りこれを突切れば後《あと》は誠に楽になるから、さっ/\と行きなさい、其のような事で気怯《きおく》れがするような事ではいかん、ズッ/\と突切って行くようでなければいかん、それを恐れるような事ではなりませんぞ、火に入《い》って焼けず水に入って溺《おぼ》れず、精神を極《きよ》めて進んで行きなさい」
相「さようなれば此のお重箱は置いて参りましょう」
良「いや折
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