町《はたごちょう》へ行《ゆ》きなさい、其処《そこ》に白翁堂勇齋という人相を見る親爺《おやじ》がいるが、今年はもう七十だが達者な老人でなア、人相は余程名人だよ、是《こ》れに頼めばお前の望みの事は分ろうから往《い》って見なさい」
孝「はい、有り難う存じます、神田の旅籠町でございますか、畏《かしこま》りました」
良「お前旅へ行《ゆ》くなれば私が餞別を進ぜよう、お前が折角呉れた布施は此方《こちら》へ貰って置くが、又私が五両餞別に進ぜよう、それから此の線香は外《ほか》から貰ってあるから一箱進ぜよう仏壇へ線香や花の絶えんように上げて置きなさい、是れだけは私が志じゃ」
相「方丈様恐れ入りまする、何《ど》うも御出家様からお線香なぞ戴いては誠にあべこべな事で」
良「そんな事を云わずに取って置きなさい」
孝「誠に有り難う存じます」
良「孝助殿気の毒だが、お前はどうも危い身の上でナア、剣《つるぎ》の上を渡るようなれども、それを恐れて後《あと》へ退《さが》るような事ではまさかの時の役には立たん、何《なん》でも進むより外《ほか》はない、進むに利あり退《しりぞ》くに利あらずと云うところだから、何でも憶《おく》して
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