れ、急ぎ本堂へ直りますると、かれこれ坊主の四五十人も押並《おしなら》び、いと懇《ねんごろ》なる法事供養をいたし、施餓鬼《せがき》をいたしまする内に、もはや日は西山《せいざん》に傾く事になりましたゆえ、坊様達《ぼうさんたち》には馳走なぞして帰してしまい、後《あと》で又孝助、新五兵衞、良石和尚の三人へは別に膳がなおり、和尚の居間で一口飲むことになりました。
相「方丈様には初めてお目にかゝります、私《わたくし》は相川新五兵衞と申す粗忽な者でございます、今日《こんにち》又|御懇《ごねんごろ》な法事供養を成しくだされ、仏も嘸《さぞ》かし草葉の蔭から満足な事でございましょう」
良「はいお前は孝助殿の舅御《しゅうとご》かえ、初めまして、孝助殿は器量と云い人柄と云い立派な正しい人じゃ、中々正直な人間で余程|怜悧《りこう》じゃが、お前はそゝっかしそうな人じゃ」
相「方丈様はよく御存じ、気味のわるいようなお方だ」
良「就《つ》いては、孝助殿は旅へ行《ゆ》かれる事を承わったが、未《ま》だ急には立ちはせまいのう、私が少し思う事があるから、明日《あす》昼飯《ひるめし》を喰って、それから八《や》ツ前後に神田の旅籠
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