ている間《うち》、新三郎も此のお嬢は真《しん》に美しいものと思い詰めながら、ずっと手を出し手拭を取ろうとすると、まだもじ/\していて放さないから、新三郎も手拭の上からこわ/″\ながらその手をじっと握りましたが、此の手を握るのは誠に愛情の深いものでございます。お嬢様は手を握られ真赤《まっか》に成って、又その手を握り返している。此方《こちら》は山本志丈が新三郎が便所へ行《ゆ》き、余り手間取るを訝《いぶか》り
志「新三郎君は何処《どこ》へ行《ゆ》かれました、さア帰りましょう」
 と急《せ》き立てればお米は瞞《ごま》かし、
米「貴方《あなた》何《な》んですねえ、おや貴方《あなた》のお頭《つむり》がぴか/\光ってまいりましたよ」
志「なにさそれは灯火《あかり》で見るから光るのですわね、萩原氏々々」
 と呼立てれば、
米「何《な》んですねえ、宜《よ》うございますよう、貴方《あなた》はお嬢様のお気質も御存じではありませんか、お堅いから仔細《しさい》はありませんよ」
 と云って居ります所へ新三郎が漸《よう》よう出て来ましたから、
志「君|何方《どちら》にいました、いざ帰りましょう、左様なればお暇《いと
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