、お米は此方《こちら》へ帰りながら、お嬢様があゝいうお方に水を掛けて上げたならば嘸《さぞ》お嬉しかろう、彼《あ》のお方は余程《よっぽど》御意《ぎょい》に適《かな》った様子。と独言《ひとりごと》をいいながら元の座敷へ参りましたが、忠義も度を外《はず》すと却《かえ》って不忠に陥《お》ちて、お米は決して主人に猥《みだ》らな事をさせる積りではないが、何時《いつ》も嬢様は別にお楽《たのし》みもなく、鬱《ふさ》いでばかり入《いら》っしゃるから、斯《こ》ういう冗談でもしたら少しはお気晴《きばら》しになるだろうと思い、主人のためを思ってしたので。さて萩原は便所から出て参りますと、嬢様は恥かしいのが一杯で只|茫然《ぼんやり》としてお水《ひや》を掛けましょうとも何とも云わず、湯桶《ゆおけ》を両手に支えているを、新三郎は見て取り、
新「是は恐れ入ります、憚《はゞか》りさま」
と両手を差伸《さしの》べれば、お嬢様は恥かしいのが一杯なれば、目も眩《くら》み、見当違いのところへ水を掛けておりますから、新三郎の手も彼方此方《あちらこちら》と追《おい》かけて漸《ようよ》う手を洗い、嬢様が手拭をと差出してもモジ/\し
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