掛けたのを幸いに、己もそうとは知りながら、ツイ男のいじきたな、手を出したのは此方の過《あやま》りだから、何も云わずに千疋を出し、別段|餞別《はなむけ》にしようと思い、これ此の通り廿五両をやろうと思っている処、一本よこせと云われちゃア、どうせ細《ほそ》った首だから、素首《そっくび》が飛んでも一文もやれねえ、それにお前よく聞きねえ、江戸|近《ぢか》のこんな所にまご/\していると危ねえぜ、孝助とかゞ主人の敵《かたき》だと云ってお前を狙っているから、お前の首が先へ飛ぶよ、冗談じゃアねえ」
 と云われて源次郎は途胸《とむね》を突いて大いに驚き、
源「さような御苦労人とも知らず、只の堅気《かたぎ》の旦那と心得、威《おど》して金を取ろうとしたのは誠に恐縮の至り、然《しか》らば相済みませんが、これを拝借願います」
伴「早く行《ゆ》きなせえ、危険《けんのん》だよ」
源「さようならお暇《いとま》申します」
伴「跡をしめて行ってくんな」
 志丈は戸棚より潜《もぐ》り出し、
志「旨かったなア、感服だ、実に感服、君の二三の水出し、やらずの最中《もなか》とは感服、あゝ何《ど》うもそこが悪党、あゝ悪党」
 これより
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