うものゝ、贔屓の引倒しで何《なん》の役にも立ちません、旦那の御新造《ごしんぞ》がねえ、どうも恐れ入った、勿体《もってい》ねえ、馬士《まご》や私のようなものゝ機嫌気づまを取りなさるかと思えば気の毒だ、それがために失礼も度々《たび/\》致しやした」
源「どう致しまして、伴藏さんにちと折入って願いたい事がありますが、私共《わたくしども》夫婦は最早旅費を遣《つか》いなくし、殊《こと》には病中の入費《いりめ》薬礼や何やかやで全く財布《さいふ》の底を払《はた》き、漸《ようや》く全快しましたれば、越後路へ出立したくも如何《いか》にも旅費が乏しく、何《ど》うしたら宜《よ》かろうと思案の側から、女房が関口屋の旦那は御親切のお方ゆえ、泣附いてお話をしたらお見継《みつ》ぎくださる事もあろうとの勧めに任せ参りましたが、どうか路金《ろぎん》を少々拝借が出来ますれば有り難う存じます」
伴「これはどうも、そう貴方のように手を下げて頼まれては面目がありませんが」
 と中は幾許《いくら》かしら紙に包んで源次郎の前にさし置き、
伴「ほんの草鞋銭《わらじせん》でございますが、お請取《うけと》り下せえ」
 と云われて源次郎は
前へ 次へ
全308ページ中234ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング