ださい」
伴「左様でございますか、先《ま》ずお上《あが》り」
源「早朝より罷《まか》り出《い》でまして御迷惑、貴方《あなた》が御主人か」
伴「へい、関口屋伴藏は私《わたくし》でございます、こゝは店先どうぞ奥へお通りくださいまし」
源「然《しか》らば御免を蒙《こう》むる」
 と蝋色鞘《ろいろざや》茶柄《ちゃつか》の刀を右の手に下げた儘《まゝ》に、亭主に構わずずっと通り上座《かみざ》に座す。
伴「どなた様でござりますか」
源「これは始めてお目に懸りました、手前は土手下に世帯《しょたい》を持っている宮野邊源次郎と申す粗忽《そこつ》の浪人、家内國|事《こと》、笹屋方にて働女《はたらきおんな》をなし、僅《わずか》な給金にてよう/\其の日を送りいる処、旦那より深く御贔屓を戴くよし、毎度國より承わりおりますれど、何分|足痛《そくつう》にて歩行も成り兼ねますれば、存じながら御無沙汰、重々御無礼をいたした」
伴「これはお初にお目通りをいたしました、伴藏と申す不調法もの幾久しく御懇意を願います、お前様の塩梅《あんばい》の悪いと云う事は聞いていましたが、よくマア御全快、私《わっち》もお國さんを贔屓にするとい
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