志丈の顔を見て、
國「おや/\山本志丈さん、誠に暫《しばら》く」
志「これは妙、何《ど》うも不思議、お國さんがこゝにお出《い》でとは計らざる事で、これは妙、内々《ない/\》御様子を聞けば、思うお方と一緒なら深山《みやま》の奥までと云うようなる意気事筋《いきごとすじ》で、誠に不思議、これは希代《きたい》だ、妙々々」
と云われてお國はギックリ驚いたは、志丈はお國の身の上をば精《くわ》しく知った者ゆえ、若《も》し伴藏に喋べられてはならぬと思い、
國「志丈さんちょっと御免あそばせ」
と次の間へ立ち。
國「旦那ちょっと入っしゃい」
伴「あいよ、志丈さん、ちょいと待ってお呉れよ」
志「あゝ宜しい、緩《ゆっ》くり話をして来たまえ、僕はさようなことには慣れて居るから苦しくない、お構いなく、緩くりと話をして入っしゃい」
國「旦那どう云うわけであの志丈さんを連れて来たの」
伴「あれは内に病人があったから呼んだのよ」
國「旦那あの医者の云う事をなんでも本当にしちゃアいけませんよ、あんな嘘つきの奴はありません、あいつの云う事を本当にするととんでもない間違いが出来ますよ、人の合中《あいなか》を突《つッ》つく
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