体病人は嫌《きれ》えだ、あの臭い寝床の側へ寄るのは厭《いや》だから、金さえあればツイ一杯呑む気になるようなものだから、江戸を喰い詰めて来たのだが、あの妻君《さいくん》はお達者かえ、イヤサおみねさんには久しく拝顔《はいがん》を得ないがお達者かえ」
伴「あれは」
と口ごもりしが、
「八日あとの晩土手下で盗賊《どろぼう》に切殺されましたよ、それから漸《ようや》く引取って葬式《とむらい》を出しました」
志「ヤレハヤこれはどうも、存外な、嘸《さぞ》お愁傷《しゅうしょう》、お馴染《なじみ》だけに猶更《なおさら》お察し申します、あの方は誠に御貞節ないゝお方であったが、これが仏家《ぶっか》でいう因縁とでも申しますのか、嘸まア残念な事でありましたろう、それでは御病人はお家内ではないね」
伴「えゝ内の女ですが、なんだか熱にうかされて妙な事を云って困ります」
志「それじゃア一寸《ちょっと》診《み》て上げて、後《あと》で又いろ/\昔の話をしながら緩《ゆる》りと一杯やろうじゃアないか、知らない土地へ来て馴染の人に逢うと何だか懐かしいものだ、病人は熱なら造作《ぞうさ》もないからねえ」
伴「文助や、先生は甘い物は
前へ
次へ
全308ページ中222ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング