い》だ」
 と云うものゝ、腹の内では大いに驚き、早く療治をして直したいと思う所へ、此の節幸手に江戸から来ている名人の医者があるというから、それを呼ぼうと、人を走《は》せて呼びに遣《や》りました。

        十八

 伴藏は女房が死んで七日目に寺参りから帰った其の晩より、下女のおますが訝《おか》しな譫言《うわこと》を云い、幽霊に頼まれて百両の金を貰い、是迄の身代に取付いたの、萩原新三郎様を殺したの、海音如来のお守を盗み出し、根津の清水の花壇の中へ埋《うず》めたなどゝ喋《しゃべ》り立てるに、奉公人たちは何《なん》だか様子の分らぬ事ゆえ、只《たゞ》馬鹿な譫語《うわこと》をいうと思っておりましたが、伴藏の腹の中では、女房のおみねが己に取り付く事の出来ない所から、此の女に取付《とッつ》いて己の悪事を喋らせて、お上《かみ》の耳に聞えさせ、おれを召捕《めしと》り、お仕置《しおき》にさせて怨《うら》みをはらす了簡に違いなし、あの下女さえいなければ斯様《かよう》な事もあるまいから、いっそ宿元《やどもと》へ下げて仕舞おうか、いや/\待てよ、宿へ下げ、あの通りに喋られては大変だ、コリャうっかりした事
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