有難うござります」
みね「何《なん》だよそんなにお礼を云われては却《かえ》って迷惑するよ、ちょいとお前に聞きたいのだが、宅《うち》の旦那は、四月頃から笹屋へよくお泊りなすって、お前も一緒に行って遊ぶそうだが、お前は何故私に話をおしでない」
久「おれ知んねえよ」
みね「おとぼけで無いよ、ちゃんと種が上《あが》っているよ」
久「種が上るか下《さが》るか己《お》らア知んねえものを」
みね「アレサ笹屋の女のことサ、ゆうべ宅《うち》の旦那が残らず白状してしまったよ、私はお婆さんになって嫉妬《やきもち》をやく訳ではないが旦那の為を思うから云うので、あの通りな粋《いき》な人だから、悉皆《すっかり》と打明けて、私に話して、ゆうべは笑ってしまったのだが、お前が余《あんま》りしらばっくれて、素通りをするから呼んだのさ、云ったッて宜《い》いじゃアないかえ」
久「旦那どんが云ったけえ、アレマアわれさえ云わなければ知れる気遣《きづけ》えはねえ、われが心配《しんぺい》だというもんだから、お前さまの前へ隠していたんだ、夫婦の情合《じょうあい》だから、云ったらお前《めえ》も余《あんま》り心持も好《よ》くあんめえと思っ
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