内儀《かみ》さま、大きに無沙汰を致しやした、ちょっくり来るのだアけど今ア荷い積んで幸手《さって》まで急いでゆくだから、寄っている訳にはいきましねえが、此間《こないだ》は小遣《こづかい》を下さって有難うごぜえます」
みね「まアいゝじゃアないか、お前は宅《うち》の親類じゃないか、一寸《ちょっと》お寄りよ、一ぱい上げたいから」
久「そうですかえ、それじゃア御免なせい」
と馬を店の片端に結《ゆわ》い付け、裏口から奥へ通り、
久「己《おら》ア此家《こっち》の旦那の身寄りだというので、皆《みんな》に大きに可愛《かわい》がられらア、この家《うち》の身上《しんしょう》は去年から金持になったから、おらも鼻が高い」
と話の中《うち》におみねは幾許《いくら》か紙に包み、
みね「なんぞ上げたいが、余《あん》まり少しばかりだが小遣《こづかい》にでもして置いておくれよ」
久「これアどうも、毎度《めいど》戴いてばかりいて済まねえよ、いつでも厄介《やっけえ》になりつゞけだが、折角の思し召しだから頂戴いたして置きますべい、おや触《さわ》って見た所じゃアえらく金があるようだから単物《ひとえもの》でも買うべいか、大きに
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