て口説《くど》きつけ、遂に彼《か》の女と怪しい中になりました。一体此の女は飯島平左衞門の妾お國にて、宮野邊源次郎と不義を働き、剰《あまつ》さえ飯島を手に掛け、金銀衣類を奪い取り、江戸を立退《たちの》き、越後の村上へ逃出しましたが、親元|絶家《ぜっけ》して寄るべなきまゝ、段々と奥州路を経囘《へめぐ》りて下街道《しもかいどう》へ出て参り此の栗橋にて煩《わずら》い付き、宿屋の亭主の情《なさけ》を受けて今の始末、素《もと》より悪性《あくしょう》のお國ゆえ忽《たちま》ち思う様《よう》、此の人は一代身上《いちだいじんしょう》俄分限《にわかぶげん》に相違なし、此の人の云う事を聞いたなら悪い事もあるまいと得心したる故、伴藏は四十を越して此のような若い綺麗な別嬪にもたつかれた事なれば、有頂天界《うちょうてんがい》に飛上り、これより毎日こゝにばかり通い来て寝泊りを致しておりますと、伴藏の女房おみねは込上《こみあが》る悋気《りんき》の角も奉公人の手前にめんじ我慢はしていましたが、或日《あるひ》のこと馬を牽《ひ》いて店先を通る馬子を見付け、
みね「おや久藏さん、素通りかえ、余《あんま》りひどいね」
久「ヤアお
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