の小紋の羽織が着たいとか、帯は献上博多を締めたいとか、雪駄《せった》が穿《は》いて見たいとか云い出して、一日《あるひ》同宿の笹屋《さゝや》という料理屋へ上《あが》り込み、一|盃《ぱい》やっている側に酌取女《しゃくとりおんな》に出た別嬪《べっぴん》は、年は二十七位だが、何《ど》うしても廿三四位としか見えないという頗《すこぶ》る代物《しろもの》を見るよりも、伴藏は心を動かし、二階を下りて此の家《や》の亭主に其の女の身上《みのうえ》を聞けば、さる頃夫婦の旅人《りょじん》が此の家へ泊りしが、亭主は元は侍で、如何《いか》なる事か足の疵《きず》の痛み烈《はげ》しく立つ事ならず、一日々々との長逗留《ながどうりゅう》、遂《つい》に旅用《りょよう》をも遣《つか》いはたし、そういつ迄も宿屋の飯を食ってもいられぬ事なりとて、夫婦には土手下へ世帯《しょたい》を持たせ、女房は此方《こちら》へ手伝い働き女として置いて、僅《わず》かな給金で亭主を見継《みつ》いでいるとかの話を聞いて、伴藏は金さえ有れば何うにもなると、其の日は幾許《いくら》か金を与え、綺麗に家に帰りしが、これよりせっ/\と足近く笹屋に通い、金びら切っ
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