れてもお間《ま》に合いまする、お中身もお性《しょう》も慥《たしか》にお堅い品でございまして」
 と云いながら、
亭「へい御覧遊ばしませ」
 と差出《さしだ》すを、侍は手に取って見ましたが、旧時《まえ》にはよくお侍様が刀を買《め》す時は、刀屋の店先で引抜《ひきぬ》いて見て入らっしゃいましたが、あれは危《あぶな》いことで、若《も》しお侍が気でも違いまして抜身《ぬきみ》を振※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《ふりまわ》されたら、本当に危険《けんのん》ではありませんか。今此のお侍も本当に刀を鑒《み》るお方ですから、先《ま》ず中身《なかご》の反《そ》り工合《ぐあい》から焼曇《おち》の有り無しより、差表《さしおもて》差裏《さしうら》、鋩尖《ぼうしさき》何や彼《か》や吟味致しまするは、流石《さすが》にお旗下《はたもと》の殿様の事ゆえ、通常《なみ/\》の者とは違います。
侍「とんだ良さそうな物、拙者《せっしゃ》の鑑定《かんてい》する処《ところ》では備前物《びぜんもの》のように思われるが何《ど》うじゃな」
亭「へい良いお鑑定《めきゝ》で入《いら》っしゃいまするな、恐入りました、仰《おお》せの通り
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