頃二十一二とも覚《おぼ》しく、色あくまでも白く、眉毛|秀《ひい》で、目元きりゝっとして少し癇癪持《かんしゃくもち》と見え、鬢《びん》の毛をぐうっと吊り上げて結わせ、立派なお羽織に結構なお袴《はかま》を着け、雪駄《せった》を穿《は》いて前に立ち、背後《うしろ》に浅葱《あさぎ》の法被《はっぴ》に梵天帯《ぼんてんおび》を締め、真鍮巻《しんちゅうまき》の木刀を差したる中間《ちゅうげん》が附添い、此の藤新《ふじしん》の店先へ立寄って腰を掛け、列《なら》べてある刀を眺めて。
侍「亭主や、其処《そこ》の黒糸だか紺糸だか知れんが、あの黒い色の刀柄《つか》に南蛮鉄《なんばんてつ》の鍔《つば》が附いた刀は誠に善《よ》さそうな品だな、ちょっとお見せ」
亭「へい/\、こりゃお茶を差上げな、今日は天神の御祭礼で大層に人が出ましたから、定めし往来は埃《ほこり》で嘸《さぞ》お困りあそばしましたろう」
 と刀の塵《ちり》を払いつゝ、
亭「これは少々|装飾《こしらえ》が破《や》れて居りまする」
侍「成程少し破《や》れて居《お》るな」
亭「へい中身《なかご》は随分お用《もちい》になりまする、へいお差料《さしりょう》になさ
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