を疑る訳じゃアねえが、萩原の地面|内《うち》に居る者は己と手前ばかりだ、よもや手前は盗みはしめえが、人の物を奪う時は必ず其の相《そう》に顕《あら》われるものだ、伴藏|一寸《ちょっと》手前の人相を見てやるから顔を出せ」
 と懐中より天眼鏡を取出され、伴藏は大きに驚き、見られては大変と思い。
伴「旦那え、冗談いっちゃアいけねえ、私《わっち》のような斯《こ》んな面《つら》は、どうせ出世の出来ねえ面だから見ねえでもいゝ」
 と断る様子を白翁堂は早くも推《すい》し、ハヽアこいつ伴藏がおかしいなと思いましたが、なまなかの事を云出して取逃がしてはいかぬと思い直し、
白「おみねや、事柄の済むまでは二人でよく気を付けて居て、成《なる》たけ人に云わないようにしてくれ、己は是から幡随院へ行って話をして来る」
 と藜《あかざ》の杖を曳きながら幡随院へやって来ると、良石和尚は浅葱木綿《あさぎもめん》の衣を着《ちゃく》し、寂寞《じゃくまく》として坐布団の上に坐っている所へ勇齋|入《い》り来《き》たり、
白「これは良石和尚いつも御機嫌よろしく、とかく今年は残暑の強い事でございます」
良「やア出て来たねえ、此方《こっ
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