、誰にもいわれんが、先以《まずもっ》て御主人様のお遺書《かきおき》通りに成るから心配するには及ばん、お前は親の敵《かたき》は討ったから、是からは御主人は御主人として、其の敵を復《かえ》し、飯島のお家再興だよ」
孝「仰せに及ばず、もとより敵討の覚悟でございます、此の後《のち》万事に付き宜《よろ》しくお心添《こゝろぞえ》の程を願います」
相「此の相川は年老いたれども、其の事は命に掛けて飯島様の御家《おいえ》の立つように計らいます、そこでお前は何日《いつ》敵討に出立《しゅったつ》なさるえ」
孝「最早一刻も猶予致す時でございませんゆえ、明《みょう》早天《そうてん》出立致す了簡です」
相「明日《あした》直《す》ぐに、左様かえ、余り早《は》や過ぎるじゃないか、宜しい此の事ばかりは留《と》められない、もう一日々々と引き広ぐ事は出来ないが、お前の出立|前《ぜん》に私《わし》が折入《おりい》って頼みたい事があるが、どうか叶《かな》えては下さるまいか」
孝「何《ど》のような事でも宜しゅうございます」
相「お前の出立前に娘お徳と婚礼の盃だけをして下さい、外《ほか》に望みは何もない、どうか聞済《きゝす》んで下
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