《さ》げなさいよ、この召物《めしもの》を召せ」
 と勧められ、源次郎は着物を幾枚も着て、印籠を七つ提げて、大小を六本|※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]《さ》し、帯を三本締めるなど大変な騒ぎで、漸々《よう/\》支度が整ったから、お國とともに手を取って忍び出《い》でようとする処《ところ》を、仲働きの女中お竹が、先程より騒々しい物音を聞付け、来て見れば此の有様に驚いて、
「アレ人殺し」
 という奴を、源次郎が驚いて、此の声人に聞かれてはと、一刀抜くより飛込んで、デップリ肥《ふと》って居る身体を、肩口から背びらへ掛けて斬付《きりつ》ける。斬られてお竹はキャッと声をあげて其の儘《まゝ》息は絶えました。他《ほか》の女どもゝ驚いて下流しへ這込むやら、又は薪箱《まきばこ》の中へ潜《もぐ》り込むやら騒いでいる中《うち》に、源次郎お國の両人《りょうにん》は此処《こゝ》を忍び出《い》で、何処《いずく》ともなく落ちて行《い》く。後《あと》で源助は奥の騒ぎを聞きつけて、いきなり自分の部屋を飛びだし、拳《こぶし》を振《ふる》って隣家《となり》の塀《へい》を打ち叩き、破れるよ
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