酒《ざんしゅ》が此処《こゝ》にあるから一杯あがれよ…何《な》んですね、厭《いや》です…それでは独《ひと》りで頂戴いたします」
と瓢箪《ひょうたん》を取り出す所へお米|出《い》で来《きた》り、
米「どうも誠にしばらく」
志「今日は嬢様に拝顔《はいがん》を得たく参りました、此処《こゝ》に居《い》るは僕が極《ごく》の親友です、今日はお土産《みやげ》も何《なん》にも持参致しません、エヘヽ有難うございます、是は恐れ入ります、お菓子を、羊羹《ようかん》結構、萩原君召し上れよ」
とお米が茶へ湯をさしに行ったあとを見送り、
「こゝの家《うち》は女二人ぎりで、菓子などは方々から貰っても、喰い切れずに積上げて置くものだから、皆|黴《かび》を生《はや》かして捨てるくらいのものですから、喰ってやるのが却《かえ》って親切ですから召上れよ、実に此の家《うち》のお嬢様は天下に無い美人です、今に出て入《いら》っしゃるから御覧なさい」
とお喋《しゃべ》りをしている処《ところ》へ向うの四畳半の小座敷から、飯島のお嬢さまお露が人珍らしいから、障子の隙間《すきま》より此方《こちら》を覗《のぞ》いて見ると、志丈の傍《そば
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