出して置くよ、それから何うした」
孝「そういたしますると、廊下を通る寝衣姿《ねまきすがた》は慥《たしか》に源次郎と思い、繰出す槍先あやまたず、脇腹深く突き込みましたところ間違って主人を突いたのでございます」
相「ヤレハヤ、それはなんたることか、併《しか》し疵は浅かろうか」
孝「いえ、深手でございます」
相「イヤハヤどうも、なぜ源次郎と声を掛けて突かないのだ、無闇に突くからだ、困った事をやったなア、だが過《あやま》って主人を突いたので、お前が不忠者でない悪人でない事は御主人は御存じだろうから、間違いだと云う事を御主人へ話したろうね」
孝「主人は疾《と》くより得心にて、わざと源次郎の姿と見違えさせ、私《わたくし》に突かせたのでござります」
相「これはマア何ゆえそんな馬鹿な事をしたんだ」
孝「私《わたくし》には深い事は分りませんが、此のお書置に委《くわ》しい事がございますから」
 と差出す包を、
相「拝見いたしましょう、どれこれかえ、大きな包だ、前掛が入っている、ナニ婆《ばあ》やアのだ、なぜこんな所に置くのだ、そっちへ持って行《ゆ》け、コレ本の間《ま》に眼鏡があるから取ってくれ」
 と眼鏡を
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