わたくし》の方は聞いたばかり、証拠にならず、向うには殿様から、暇《ひま》があったら夜《よる》にでも宅《うち》へ参って釣道具の損じを直して呉れとの頼みの手紙がある事ゆえ、表沙汰にいたしますれば、主人は必ず隣へ対し、義理にも私はお暇《いとま》に成るに違いはありません、さすれば後《あと》にて二人の者が思うがまゝに殿様を殺しますから、どうあっても彼《あ》のお邸《やしき》は出られんと今日まで胸を摩《さす》って居りましたが、明日《あした》は愈々《いよ/\》中川へ釣にお出《いで》になる当日ゆえ、それとなく今日殿様に明日《あした》の漁をお止め申しましたが、お聞入れがありませんから、止むを得ず、今宵《こよい》の内に二人の者を殺し、其の場で私が切腹すれば、殿様のお命に別条はないと思い詰め、槍を提《さ》げて庭先へ忍んで様子を窺《うかゞ》いました」
相「誠に感心感服、アヽ恐れ入ったね、忠義な事だ、誠に何《ど》うも、それだから娘より私《わし》が惚れたのだ、お前の志は天晴《あっぱれ》なものだ、其の様な奴は突放《つきッぱな》しで宜《い》いよ、腹は切らんでも宜いよ、私《わたし》が何《ど》のようにもお頭に届《とゞけ》を
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