多勢《たぜい》に無勢《ぶぜい》、切立《きりた》てられているのを、お前が一方を切抜けて知らせに来たのだろう、宜しい、手前は剣術は知らないが、若い時分に学んで槍は少々心得ておる、参ってお助太刀をいたそう」
孝「さようではございません、実は召使の國と隣の源次郎が疾《とう》から密通をして」
相「へい、やっていますか、呆れたものだ、そういえばちら/\そんな噂もあるが、恩人の思いものをそんな事をして憎い奴だ、人非人《にんぴにん》ですねえ、それから/\」
孝「先月の廿一日、殿様お泊番《とまりばん》の夜《よ》に、源次郎が密《ひそ》かにお國の許《もと》へ忍び込み、明日《みょうにち》中川にて殿様を舟から突落し殺そうとの悪計《わるだく》みを、私《わたくし》が立聞《たちぎゝ》をした所から、争いとなりましたが、此方《こちら》は悲しいかな草履取の身の上、向うは二男の勢《いきおい》なれば喧嘩は負《まけ》となったのみならず、弓の折にて打擲《ちょうちゃく》され、額に残る此の疵《きず》も其の時打たれた疵でございます」
相「不届至極な奴だ、お前なぜ其の事を直《すぐ》に御主人に云わないのだ」
孝「申そうとは思いましたが、私《
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