、飯島様が相川へ行ってやれ、ハイと主命を背《そむ》かず答《こたえ》はしたものゝ、お前の器量だから先に約束をした女でもあるのだろう、所が今度の事を其の女が知って私が先約だから是非とも女房にしてくれなければ主人に駆込んで此の事を告げるとか、何とか云い出したもんだから、お前はハッと思い、其の事が主人へ知れては相済まん、それじゃアお前を一緒に連れて遠国へ逃げようと云うのだろう、なに一人ぐらいの妾はあっても宜しい、お頭《かしら》へ一寸《ちょっと》届けて置けば仔細はない、尤《もっと》もの事だ、娘は表向の御新造《ごしんぞ》として、内々《ない/\》の処《ところ》は其の女を御新造として置いてもいゝ、私《わたくし》が取る分|米《まい》を其の女にやりますから宜しい、私《わたくし》が行って其の女に逢って頼みましょう、其の女は何者じゃ、芸者か何《な》んだ」
孝「そんな事ではございません」
相「それじゃア何んだよ、エイ何んだ」
孝「それではお話をいたしまするが、殿様は負傷《ておい》でいます」
相「ナニ負傷で、何故《なぜ》早く云わん、それじゃア狼藉者《ろうぜきもの》が忍び込み、飯島が流石《さすが》手者《てしゃ》でも
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