には、何か趣意がなければ破れまい、左様じゃござらんか、どう云う訳だか次第を承わりましょう、娘が気に入らないのか、舅が悪いのか、高が不足なのか、何《な》んだ」
孝「決してそういう訳ではございません」
相「それじゃアお前は飯島様を失錯《しくじ》りでもしたか、どうも尋常《たゞ》の顔付ではない、お前は根が忠義の人だから、しくじってハッと思い、腹でも切ろうか、遠方へでも行《い》こうと云うのだろうが、そんな事をしてはいかん、しくじったなら私《わたくし》が一緒に行って詫をしてやろう、もうお前は結納まで取交《とりかわ》せをした事だから、内の者、云い付けて、孝助どのとは云わせず、孝助様と呼ばせるくらいで、云わば内の忰《せがれ》を来年の二月婚礼を致すまで、先の主人へ預けて置くのだ、少し位《ぐらい》の粗相が有ったッてしくじらせる事があるものか、と不理窟をいえばそんなものだが、マア一緒に行こう、行ってやろう」
孝「いえ、そう云う訳ではございません」
相「何だ、それじゃアどう云う訳だ」
孝「申すに申し切れない程な深い訳がございまして」
相「はゝア分った、宜しい、そう有るべき事だろう、どうもお前のような忠義もの故
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